1:故障時の現象 |
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・Nに入らない
・1~6の間で変わらない
・2速固定になる
・ギア表示がマイナス表示や点滅する
・エンジンが掛からない
等、通常とは違う動作します
停車後、車体を前後にゆすりながら始動させると
ギアがNに入ることがあります。
Nに入らずエンジンが掛からない場合、
フロントブレーキレバーを握りながら
スターターボタンを押すと強制始動します。
再起動後に復帰することもありますが
故障の前兆ですので諦めてサッサと治しましょう。 |
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2:部品の手配 |
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■必要な部品等
センターボルト(対策品) |
24315-HL4-000 |
1
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ローラーピン |
96220-40080 |
1 |
M6x15mmボルト |
適当でOK |
1 |
液体ガスケット |
速乾性が便利 |
適量 |
12mmディープソケット |
センターボルト脱着用 |
1 |
を用意します。
古いパーツリストだとセンターボルトに
24315-HA0-000や24315-MGS-D20の記載がありますが
【必ず対策品のHL4を注文】すること |
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3:オイル抜き |
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2~3分暖気してオイルを落とします |
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その間に構造図の予習でも
今回トルク管理するところは
センターボルトの23Nmと
カム抑えの12Nmだけです
あとは標準トルクでOK |
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4:右カバー外し |
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プラスチックカバーを外します |
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①赤丸の配線クリップを外します
②緑丸の油圧バルブのコネクター3個外します
③黄丸のスピンドルセンサーを外します
④配線を上の方へまとめておきます |
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外カバーのボルトを抜きます
ポイントは銅ワッシャーのチェックとボルトの長さ
めんどくさがらずにダンボールに絵を書いて
刺しておくと作業が捗ります |
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カバーを割ります
各所に引っ掛けがあります
マイナスドライバーやバールでもいいですが
スライディングハンマーがあると便利
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針金でカバーを釣ります
そこそこ重量があるので気を付けること
車体とケースの間をウエスで保護すると良いかも
ケースの合わせ目を痛めるとオイル漏れの原因になります
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この先から細かい作業が続きます。
コーヒーブレークしながら中身をウォッチしときましょう
左側の大きな塊がDCTのクラッチAssyです
手前側が奇数(1,3,5)ギア。奥が偶数(2,4,6)ギアです
※なぜ休むか → 各部品が熱くて作業できないためですw |
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5:クラッチ外し |
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まずここを観察して仕組みを理解してください
クランク軸のドライブギアが2枚になっています
手前がバネで吊られている「セラシギア」
バックラッシュを緩和してギア鳴りを抑えます。 |
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クラッチと噛み合っているセラシギアがズレないように
M6のボルトでキッチリ止めておきます
これを忘れると組立の時に手が足りなくなります
もちろん組んだ後は忘れずに外します |
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重要なことなので先に説明します
クラッチの止まっている軸には
【超重要なシール】があります
これを絶対に傷つけないでください |
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シールを痛めないように両手を使い
真っすぐにクラッチを手前に抜きます
精密部品ですので綺麗な場所へ置きましょう |
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6:ボルト抜き |
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スピンドルとボルト2本の位置を確認 |
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スピンドルは手前に抜きます
ワッシャーの落下に注意しましょう |
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ボルト2本抜くとカムとプレートが外れます
ボルトは長い方が車体前側です
このボルトは12Nmで締め付けます |
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落下事故防止のためオイルの穴をウエス等で塞ぎます
対象の交換するシフトセンターボルトを抜きます
本来は23Nmとネジロックで止まっています
折れている場合は破片を全て取り除きましょう
ボルトが少し長いので12mmのディープが必要になります |
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裏側のローラピンが入る溝を確認します |
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ローラーピンを抜いて新品に入れ替えます
小さいので落下紛失に注意しましょう |
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上が未対策の折れるシフターピンです
下の黒いのが今回交換する対策部品
シフターの穴とボルトを脱脂してから
ネジロックを塗布して23Nm
で締め付けます
意外と軽いトルクですが、オーバートルクを掛けると
中のシフトアームが壊れたり抜けたりしますので
指定トルクは厳守してください
シフトアームを壊すとクランクケース割りとなります
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参考写真
このようにドラム側でボルトが折れていた場合
エキストラクター(逆タップ)で抜くことになりますが
失敗するとクランクケースを分解する必要があり
コスト的には事実上の全損となります。
自信の無い場合は諦めてショップに入庫してください
自分らはエキストラクター作業に6時間掛かりました |
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7:クラッチ組んで、元に戻して完了 |
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①のインナーギアは②よりも下(中側)となります
浮いている場合は一旦抜いて再セットしてください。
裏側にも同様のパーツがありますのでチェックします |
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クラッチ板は3枚あります
スリットを精密ドライバー等で揃えてから
インナーギアを落とし込みます
かなり根気のいる作業です机の上で頑張って! |
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落とし込みが足らない場合、
この写真は3枚のうち最後の1枚が入っていません。 |
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正常に落ちるとお椀がツラより奥に入ります |
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せっかく苦労して入れたお椀ですから
大事に親指と人差し指&中指で挟んで
ビックマックを持つように持ち上げます |
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クラッチ側のスプラインと... |
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車体側シャフトのスプラインを入れるだけの
簡単なお仕事ですw
コツとしては
・外側(手前)スプライン
・セラシの付いてるギア
・内側(奥)スプライン
という順序でハメると良いです |
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根気要りますが頑張ってください
慣れてても数分格闘することが多いです
ギアが入っていればタイヤ回すと
シャフトスプラインが回りますので
助手にタイヤを回してもらうと楽かもしれません |
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どうしても入らない場合はセラシの2枚歯がキッチリ
揃っているか再確認してください。
必要であればお椀抜いた状態で入るかもチェック
コトンという感じで奥まで入ればOK
確認はセラシギアのツラと... |
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シャフトのスプラインの出幅で確認できます |
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簡単に書きましたが、結構難儀する作業ですので
どうしてもできない場合は連絡頂ければ
電話でお話可能です。FBのグループ経由でどうぞ。
OKであれば液体ガスケットを使用してケースを戻して完了
再確認!
セラシのM6は回収したか?
おつかれさまでしたー♪
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番外編 : シフトモーター清掃 |
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液体ガスケットが乾くまで1~2時間かかります
その間にモーターの清掃をしちゃいましょう
シフトモーターも故障の要因となります
4~5万キロになったら掃除しましょう
本来は非分解部品ですが簡単にバラせます
位置は車両左側の中央下部分 |
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プロテクターのネジ2本と
モーターのネジ3本を外します |
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コネクターを外して手前にポコっと抜きます
Oリングがありますので紛失に注意 |
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ネジ2本で蓋を取るとバラせます
カーボンが溜まっていると短絡故障します
黒いカーボン粉を丁寧に清掃して戻せば完了 |
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ユーザーレポート編 |
オイル交換の時期と同時にDCTのシフトドラムボルトの交換を実施しました。
決して軽い気持ちで挑んだわけではありませんでしたが、結局自分ひとりでは作業は完結せず、助けて頂き無事交換できました。
ちなみに私の作業スキルですが、原付キャブOH、ミニバイクタイヤ交換、チェーン交換、フロントフォークOHくらいです。
これくらいのスキルの人間がやってみた内容なので参考にしてください。
今回の作業の心配な点は
・シャフトのシールを傷つけずにクラッチを脱着できるか。
・クラッチギアの落とし込みができるのか。
・液体ガスケットをうまく塗れるか。
の3点でした。
以下作業の経過です。
作業前日にオイルを抜いて放置してます。直前にやるとアツアツらしいのでw
アンダーカウル外し、樹脂製のカバーを外し、センサーを外すまでは悩みませんでした。
クランクケースですがプラスチックハンマーで叩きながら揺らして引っ張ると外れました。
クランクケースは針金で吊り、心配性なのでコンテナを支えにして負担を減らします。
第一関門のクラッチ外しはシャフトに負荷を与えず真っ直ぐ引き抜きます。
少し引っかかりがあるので小刻みに揺すりながら引き抜きます。バイブレーターになった気分で引き抜きますw
第一関門は思ったよりもうまくいきました。
2枚組のドライブギアの歯を揃えておくためにM6ボルトで固定します。
ちなみに写真を見返したらボルト固定の時点でドライブギアの歯がずれてました。
この時点で負けが確定しています。
(注:クラッチ外す前にドライブギアのセラシをM6で固定する必要があります)
諸悪の根源シフトセンターボルトを交換。
シフトセンターボルトは12mmのソケットを使用しますが、標準だと掛かりが浅いのでディープかセミディープソケットを準備すると良いと思います。
意外に悩んだのがセンターシフトドラムのドラムストッパーのはめ込み。
スプリングが思ったより強くて、なかなか上手くいかず時間が掛かりました。
全部はめ込んだ後にスプリングの巻いてない側をプライヤーで持ち上げはめ込みました。
後は間違えていらんボルト外したり、なんやかんやで時間を食う。
クラッチの落とし込み。
両面のクラッチを落とし込みます。
最初はてっきり片面だけだと思っていたので面食らいました。
この時点でどこまでやれば良いのかわからなかったので、メンバーのIさんに電話する。
初めてにも関わらず親切に教えて頂きました。あとイケボイスだったw
とりあえずクラッチがハウジングに落ちた気がしたので試しに組み込んでみる。
タイヤを回しながらやってみた。
結局いろんな点で駄目だったので翌日に持ち込む。
翌日。午前中に頑張ったけどいまいち要領が掴めず諦めて、その翌日に応援に来て頂くことに。
月曜日の午後。
この問題作業の先駆者といっても過言ではない御二方と更に応援の方(Sさん)1名にお越し頂きました。
なんか仕事の合間にいらっしゃた感じで恐縮です(-_-;)
作業経過を見ていただいたところ、片面ギアの落とし込みは出来ていたとのこと。
二枚組のドライブギアのズレはM6ボルトの締め込みが甘かったか?
手前のドライブギアをマイナスドラーバーで動かし、適正な場所でM6ボルトを締め込む。
この「適正」な場所は凄く微妙で一見ギアの山が揃ってるように見えるが、ほんの僅かにリア側にズレてるとのこと。
初めからM6ボルトの締め込みが決まっていたら手間が省けていたかもしれません。
クラッチの両面を落とさずハンバーガーのビッグマックを持つ感じで掴みシャフトに入れます。
指でシャフトの奥にあるスプラインの感触をを確認しながら後輪を回してもらいハメ込む!はめ込む!嵌めこ・・・めん!
結局一番の山場はKさんにやってらうことにw
めでたく組み付けてもらったところで、やったことのない液体ガスケットを塗ります。
モノタロウのガスケット使おうと思ったら硬化時間が掛かりすぎるので、ホンダご謹製の液体ガスケットお借りして塗りました。
次からホンダのガスケット買おう・・・
超おっかなびっくり塗りましたが、コツを教えてもらいながら実施。
なんとか塗り終わりケースを元の位置に封入。
ちなみに言われなかったら、このとき危うくM6ボルトを中に置いて行くところでした。危ない危ない。
硬化するまで時間があるってことでシフトモーターの清掃も教えて頂き実施しました。
オイルを入れてエンジン点火!・・・しないぞ?
一瞬、戦慄が走る。
「油圧バルブのセンサー外れてるよ」
なーんだということで、センサーのコネクターはめてスイッチオン。
「カタッカタッ」ギアの変わる小気味よい音を立てながら起動。
スターターでエンジン点火すると、いつも通り「ボン」という排気音を奏でながらエンジンが始動した!ヤッター!
喜ぶのはまだ早い。試走して変速に異常ないか確認。
試走してギアや走りに異常ないことを確認できた。
こうして無事作業を終えたのでした。
一時はどうなるかと思ったけど、多くの助言を頂き直接助けをしていただいた方々には感謝しかありません。
この場をお借りして御礼申し上げます。
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